抄訳
薬剤耐性の問題が深刻化する中、安全かつ効果的な新たな抗菌戦略の開発が求められている。本研究では、安全性と治療効果を両立する新たな抗菌アプローチとして、非増殖性ファージにバクテリオシンを搭載した製剤を開発した。まず、ファージ療法の課題である制御不能なファージ増殖や体内動態の不確実性を克服するため、非増殖性ファージを基盤とするDNA導入システム「B-CAP(Bacteria-targeting Capsid Particle)」を構築した。B-CAPは、ファージのカプシドに部分的なファージゲノムを内包することで自己増殖能を持たず、野生型ファージと同様に標的細菌への遺伝子注入が可能である。T7ファージをベースとしたB-CAPでは、最大18 kbの外来DNAを搭載でき、標的細菌に長鎖DNAを導入することができる。
B-CAP単体では一細胞ごとの殺菌にとどまるため、我々は周囲の細菌も殺菌できるように、殺菌性タンパク質コリシンE1のオペロンを搭載したB-CAP_ColE1を作製した。このB-CAP_ColE1は、カルバペネム耐性大腸菌に対して、in vitroおよびin vivoの両条件で顕著な殺菌効果を示し、マウス感染モデルにおいても生存率の有意な改善が認められた。
ファージ製剤(B-CAP ColE1)の殺菌様式