本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2025/06/23

安全性と抗菌治療効果を兼ね備えた非増殖性ファージの開発

論文タイトル
Development of a nonreplicative phage-based DNA delivery system and its application to antimicrobial therapies
論文タイトル(訳)
安全性と抗菌治療効果を兼ね備えた非増殖性ファージの開発
DOI
10.1093/pnasnexus/pgaf176
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 4, Issue 6, June 2025, pgaf176
著者名(敬称略)
氣駕 恒太朗、崔 龍洙 他
所属
自治医科大学医学部感染・免疫講座細菌学部門
著者からのひと言
これまで、私たちは非増殖性ファージでは十分な抗菌効果を得るのは難しいと考えてきました。しかし本研究では、殺菌作用を持つタンパク質(バクテリオシン)を組み込むことで、非増殖性ファージによる細菌の除去効果が大きく向上することを初めて明らかにしました。今後、この新しい治療法が感染症治療への応用につながることが期待されます。

抄訳

薬剤耐性の問題が深刻化する中、安全かつ効果的な新たな抗菌戦略の開発が求められている。本研究では、安全性と治療効果を両立する新たな抗菌アプローチとして、非増殖性ファージにバクテリオシンを搭載した製剤を開発した。まず、ファージ療法の課題である制御不能なファージ増殖や体内動態の不確実性を克服するため、非増殖性ファージを基盤とするDNA導入システム「B-CAP(Bacteria-targeting Capsid Particle)」を構築した。B-CAPは、ファージのカプシドに部分的なファージゲノムを内包することで自己増殖能を持たず、野生型ファージと同様に標的細菌への遺伝子注入が可能である。T7ファージをベースとしたB-CAPでは、最大18 kbの外来DNAを搭載でき、標的細菌に長鎖DNAを導入することができる。
B-CAP単体では一細胞ごとの殺菌にとどまるため、我々は周囲の細菌も殺菌できるように、殺菌性タンパク質コリシンE1のオペロンを搭載したB-CAP_ColE1を作製した。このB-CAP_ColE1は、カルバペネム耐性大腸菌に対して、in vitroおよびin vivoの両条件で顕著な殺菌効果を示し、マウス感染モデルにおいても生存率の有意な改善が認められた。

 
ファージ製剤(B-CAP ColE1)の殺菌様式

 

論文掲載ページへ