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2025/07/14

脳内のダニ媒介性脳炎ウイルスを中和する血液脳関門透過型抗体の開発

論文タイトル
Development of blood-brain barrier-penetrating antibodies for neutralizing tick-borne encephalitis virus in the brain
論文タイトル(訳)
脳内のダニ媒介性脳炎ウイルスを中和する血液脳関門透過型抗体の開発
DOI
10.1128/msphere.00184-25
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Ahead of Print
著者名(敬称略)
福田 美津紀 好井 健太朗 他
所属
長崎大学 高度感染症研究センター 研究部門 ウイルス生態研究分野
著者からのひと言
中枢神経系に感染するウイルスに対して、いかにして抗ウイルス薬を脳内に届け、有効に作用させるかは、治療法開発における大きな課題でした。本研究では、血液脳関門(BBB)を通過する分子に着目し、それを抗ウイルス抗体と融合させることで、脳内に侵入したウイルスを中和できることを初めて実証しました。これは、感染症治療にとどまらず、今後、さまざまな神経変性疾患への応用が期待されるものです。

抄訳

ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)は重篤な中枢神経症状を引き起こすフラビウイルスの一種で、現在有効な治療法は存在しません。本研究では、中枢神経系に侵入したTBEVを排除することを目的に、血液脳関門(BBB)を通過可能な抗体の開発を行いました。BBBを透過する性質を持つ狂犬病ウイルス由来のペプチドを融合させた中和抗体は、in vitroおよびin vivoのモデルにおいてBBBを通過し、脳内のTBEVに対して中和活性を示しました。特に、ウイルスが脳に侵入した後に末梢から投与しても治療効果が認められた点は、TBE治療法開発における重要な知見です。本研究は、脳標的型抗ウイルス抗体療法の可能性を初めて示したものであり、今後の中枢神経感染症治療の発展が期待されます。

 

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