抄訳
ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)は重篤な中枢神経症状を引き起こすフラビウイルスの一種で、現在有効な治療法は存在しません。本研究では、中枢神経系に侵入したTBEVを排除することを目的に、血液脳関門(BBB)を通過可能な抗体の開発を行いました。BBBを透過する性質を持つ狂犬病ウイルス由来のペプチドを融合させた中和抗体は、in vitroおよびin vivoのモデルにおいてBBBを通過し、脳内のTBEVに対して中和活性を示しました。特に、ウイルスが脳に侵入した後に末梢から投与しても治療効果が認められた点は、TBE治療法開発における重要な知見です。本研究は、脳標的型抗ウイルス抗体療法の可能性を初めて示したものであり、今後の中枢神経感染症治療の発展が期待されます。