抄訳
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)がコードする Us3 は、セリン・スレオニンキナーゼとして多様なウイルスおよび宿主タンパク質をリン酸化するが、これらのリン酸化がどのように精密に制御され、感染に如何に関与しているかは不明であった。本研究では、相同性検索と AlphaFold 解析を組み合わせ、キナーゼの活性調節部位とされる活性化ループ(A-loop)を推定し、A-loop 内の進化的に保存された Ala-326 を Val または Ile に置換することで、326 位における疎水性および側鎖の大きさを変化させた変異ウイルスを作製・解析した。その結果、両変異は基質ごとのリン酸化状態に選択的な変化を与え、細胞間伝播効率やマウスにおける病原性に影響を及ぼした。一連の知見から、Us3 による基質特異的リン酸化の fine-tuning が HSV-1 感染制御に重要であること、ならびにウイルスキナーゼの A-loop がその調節に関与する可能性が示された。