抄訳
哺乳類では、聴覚を担う有毛細胞が一度傷害されると再生せず、感音難聴は回復しません。一方、鳥類では有毛細胞が傷害を受けると、支持細胞を起源に新たな有毛細胞が再生し、難聴が治ります。しかし、その再生機構の詳細は解明されていません。これまでの研究で、鳥類の有毛細胞再生過程では、支持細胞がリプログラミングされた後、有毛細胞へと分化すること、この過程でエンドセリン受容体B2(EDNRB2)が特異的に発現することが解っていましたが、その具体的な機能は不明でした。本研究により、EDNRB2が発生期の鶏蝸牛において、前駆細胞から有毛細胞あるいは支持細胞への分化の方向性が決定する時期に限って発現していることが明らかになりました。さらに、再生過程では、EDNRB2が前駆細胞の有毛細胞への運命決定、移動、分化成熟を制御していることが解明されました。本成果は、支持細胞から有毛細胞への再生時における細胞運命決定機構と分化過程の理解を深め、哺乳類での有毛細胞再生に貢献することが期待されます。