抄訳
モデル植物シロイヌナズナの種子において、胚と種皮の間に位置する胚乳細胞層は、種子の成熟や発芽の制御に重要な役割を担っています。その生理機能を分子・細胞レベルで理解するには、顕微鏡による高解像度観察が不可欠です。しかし、胚乳細胞層は種皮の内側に存在し、種子自体も非常に小さいため、組織や細胞を傷つけることなく観察可能な状態で調製するのは困難でした。本論文では、発達中および成熟種子における胚乳細胞層を顕微鏡で観察するためのサンプル調整法を詳述しています。この手法では、固定や切片作製を必要とせず、標準的な実験器具(注射針、精密ピンセット、実体顕微鏡など)を用いるだけで、生きた胚乳細胞を多数観察することが可能です。本手法により、胚乳細胞層の細胞および分子レベルでの研究が一層進展し、その新たな機能の解明に寄与することが期待されます。