本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2025/07/18

D-アラニン合成系と外因性アラニンは黄色ブドウ球菌の薬剤感受性に影響する

論文タイトル
D-alanine synthesis and exogenous alanine affect the antimicrobial susceptibility of Staphylococcus aureus
論文タイトル(訳)
D-アラニン合成系と外因性アラニンは黄色ブドウ球菌の薬剤感受性に影響する
DOI
10.1128/aac.01936-24
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Vol. 69, No. 7
著者名(敬称略)
鈴木 優仁, 松尾 美樹, 坂口 剛正 他
所属
広島大学大学院医系科学研究科細菌学研究室
著者からのひと言
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は現状もっとも拡散している薬剤耐性菌であり、臨床で高頻度に使用されるβラクタム系抗菌剤への耐性を獲得している点から、厄介な存在として知られています。本研究では、MRSAに対してアラニンの供給を制限すると各種抗菌剤への感受性が高まるということを発見しました。この知見から、アラニンの供給阻害と既存の抗菌剤との併用などによる新規治療戦略に応用できる可能性があります。

抄訳

グラム陽性菌において、D-アラニンは、細胞壁ペプチドグリカンの架橋形成やタイコ酸の修飾に不可欠である。その合成はアラニンラセマーゼ(Alr)およびD-アミノ酸トランスアミナーゼ(Dat)に依存し、D/L-アラニンの取り込みはトランスポーターCycAにより行われる。本研究では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のalrdatcycA遺伝子を不活化した変異株を用いて感受性を評価した。その結果、特にalr欠損株およびcycA欠損株においてβ-ラクタム系、アミノグリコシド系、ダプトマイシンなど複数の抗菌薬に対する感受性が上昇し、菌体表層の陰性電荷が増加していた。さらに、アラニンを除去した培地では、MRSA株のβ-ラクタム系抗菌薬への感受性が著しく高まった。これらの結果は、D-アラニンの欠乏がペプチドグリカンの低架橋化および表層電荷の変化を引き起こし、抗菌薬感受性を上昇させることを示唆している。

論文掲載ページへ