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2025/11/07

GAPPSにおける胃癌発生に関わる遺伝子変異の解明

論文タイトル
Genomic and transcriptomic landscape of carcinogenesis in patients with gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach (GAPPS)
論文タイトル(訳)
GAPPSにおける胃癌発生に関わる遺伝子変異の解明
DOI
10.1073/pnas.2427133122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.44 e2427133122
著者名(敬称略)
松本千尋 岩槻政晃 他
所属
熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学
著者からのひと言
GAPPSは、胃体部から穹窿部にかけて多数のポリープを形成し、胃腺癌を高率に発症する極めてまれな遺伝性疾患です。疾患概念の普及に伴い報告例は増加していますが、フォローアップや治療法の確立には今なお多くの課題が残されています。本研究では、ポリープから癌へ至る分子進展過程を包括的に解析し、新たな知見を得ることができました。本研究が、この疾患の啓蒙および治療法の発展の一助となれば幸いです。

抄訳

Gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)は、胃体部から穹窿部に限局して多発性ポリープを形成し、胃癌を高率に発症する常染色体顕性遺伝性疾患である。これまでGAPPSにおいて、正常粘膜からポリープ、さらに癌へと進展する過程で蓄積する遺伝子変異については明らかにされていなかった。本研究では、GAPPSにおける正常粘膜、ポリープ、癌への進化的過程を明らかにすることを目的とした。7人のGAPPS患者(計54検体)から採取した癌、ポリープ、正常粘膜のサンプルに対して全エクソームシーケンスおよびRNAシーケンスを行い、ゲノム変化(コピー数異常および体細胞変異)、トランスクリプトーム動態を包括的に解析した。その結果、GAPPSではAPC遺伝子の体細胞変異がポリープおよび癌に認められ、さらに癌ではKRAS変異が追加的に出現することが明らかになった。また、APCおよびKRAS変異の共存が症例間および同一症例内のサブクローン間で反復して認められ、これらの共変異がGAPPSの発がんに寄与する可能性が示唆された。本研究は、GAPPS発がん過程におけるゲノムおよびトランスクリプトームのランドスケープを明らかにし、その分子機構の理解に貴重な知見を提供するものである。

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