抄訳
本研究では、日本の7農場から分離した豚インフルエンザAウイルス11株を遺伝学的に解析し、そのうち1株のH1N2ウイルスで、ヘマグルチニン(HA)の主要な抗原部位に位置する155番アミノ酸の欠失を確認した。そこで、155位に人工的な挿入または欠失を導入した組換えウイルスを作出し、培養細胞での増殖性と抗原性への影響を比較した。その結果、この欠失はイヌ腎臓上皮由来AX4細胞およびヒト肺胞上皮由来A549細胞における増殖性には大きな影響を与えなかった一方、モノクローナル抗体およびフェレット抗血清を用いた中和試験では、HA抗原性を顕著に変化させた。さらに、立体構造予測ではHA全体の大きな構造変化は示されず、局所的な抗体認識の変化が主因である可能性が示唆された。以上より、豚インフルエンザAウイルスは、1アミノ酸の欠失でも免疫逃避に関わる可能性があり、ブタ集団における流行株の継続的監視が重要であることが示された。