抄訳
肺炎マイコプラズマ(Mp)は主に小児および若年者の気道感染症の起因菌として重要である。我々は2011年~2013年に山形県で複数の遺伝子型のMpが同時に流行したことを以前報告した1)。本研究では、学校や家庭などの準閉鎖的環境におけるMp伝播の特徴を明らかにするために、同期間に山形県で確認されたMpの学校内および家族内感染事例に属する患者の情報とMp分離株の遺伝子型を併せて解析した。その結果、16の家族内感染事例のうち87.5%(14/16)では単一遺伝子型のMpが分離されたのに対して、単一遺伝子型のMpによる学校内感染事例は半数以下(5/11, 45.5%)に留まった。最大の学校内感染事例について患者の学年とクラスの情報を加えて分析したところ、各遺伝子型のMpは複数の学年から分離され、同一クラスの患者同士でも半数で遺伝子型が異なっていた。本研究では、家族間でMp遺伝子型の一致率が高かったことから、Mp伝播の場として家庭の重要性が示された。また、学校内では、Mpの伝播はクラス以外の場でも起きている可能性が示された。1) Suzuki Y, et al., Jpn J Infect Dis. 2017;70:642–646.