抄訳
目的:脳動脈瘤はその大きさと発生部位に応じて破裂率が有意に異なるが、そのメカニズムは不明である。そこで、計算流体力学 (CFD) 解析を用いてこれらの脳血管構造関連破裂リスクが脳動脈瘤の血行力学的環境に依存しているかどうかを検討した。
方法:国立病院機構共同臨床研究CFD ABO Studyの461登録症例から84例(Acom瘤42例 MCA瘤42例)の3DCTAと頚動脈エコー結果を用いて拍動流によるCFD解析を行い、血行力学指標と既知の破裂予測因子(年齢 性別 高血圧 喫煙歴 部位 大きさ)との関連を多変量解析で検討した。
結果:瘤の大きさは、壁ずり応力の大きさや時間的な乱れを表す指標と有意な相関を認めた。部位の違いでは、ずり応力の大きさと有意な相関を認め、乱れの指標に関しては多方向性の乱れの指標NtransWSSのみと有意な相関を認めた。他の既知の破裂リスクでは有意な相関は見られなかった。すべての指標の中でNtransWSSが部位と大きさ双方に対し最も高いオッズ比を示した。新たに提案した血管構造指標AAIは、ずり応力の大きさ・乱れに対し強い相関を示した。
結論:脳動脈瘤の大きさや部位による破裂率の違いは、瘤の血行力学的環境の相違を反映している可能性が示唆された。部位と大きさでは破裂の血行力学的要因が異なっていると考えられる。