抄訳
完全房室ブロック、永久ペースメーカー植え込み術後、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞の既往がある89歳男性が、3日前から左臀部痛を自覚した。安静時には痛みは消失するが、起立や歩行動作などの体動時には必ず出現し、歩行困難となった。外傷や皮疹、臀部の圧痛や神経根症状はなかった。血液検査でDダイマーが1.24µg/mLと上昇しており、造影CTでは左上殿動脈に血栓閉塞を認め、上殿動脈閉塞による臀筋跛行と診断した。ペースメーカーの波形記録で発作性心房細動を認め、直接経口抗凝固薬を開始した。
臀筋跛行は内腸骨動脈、またはその分枝の虚血で生じる。確定診断は画像検査で行うが、体動時痛以外に症状がないため診断が難しい。内腸骨動脈領域の虚血による臀筋跛行の概念を知っておくことが、迅速で正確な診断につながる可能性がある。本症例のように体動時に必発し、安静時に改善する限局性の臀部痛を診た場合、臀筋跛行を想起する必要がある。