抄訳
プラディミシン A (PRM-A) は,マンノース (Man) と特異的に結合するユニークな天然物である。現時点において,水中でManを特異的に認識する低分子化合物は他に存在しないことから,PRM-Aは極めて貴重な糖鎖研究用ツールとなる可能性を秘めている。しかしながら,PRM-Aの発見以来約30年間そのMan認識機構は不明であり,実用的なツール分子の開発に成功した例はなかった。
本研究では,X線結晶構造解析と固体NMR解析を用いてPRM-AによるMan認識メカニズムの概要を初めて明らかにするとともに,その知見に基づいてMan認識能を保持したままアジド基を導入したPRM-A誘導体 (PRM-Azide) を開発した。さらに,PRM-Azideを用いて真菌Candida rugosaの細胞壁マンナン (Manを構成糖とする多糖) を蛍光染色できることを実証した。本結果は,PRM-AzideがManを有する糖鎖を蛍光染色するツール分子として利用できる可能性を示唆するものである。