抄訳
【目的】原発性アルドステロン症 (PA)はしばしば腎障害を合併する.PAにおける腎障害の有病率と,そのオッズ比を増加させる因子を解析した.
【デザイン】日本におけるPA患者の多施設共同研究 (JPAS)のデータベース,および本態性高血圧症 (EHT)患者のデータを後ろ向きに解析した.
【方法】PA患者のchronic kidney disease (CKD),蛋白尿,推算糸球体濾過量(eGFR)低下の有病率を調査し、年齢,性別、収縮期血圧,罹病期間をマッチさせたEHT患者と比較した.また,これら腎障害のオッズ比を増加させる因子を多変量ロジスティック回帰分析で解析した.
【結果】2366人のPA患者のうち,腎障害の有病率は,CKD 19.7%,蛋白尿 10.3%, eGFR低下 11.6%であった.背景因子をマッチさせたEHT患者との比較では,PA患者で蛋白尿が有意に多かったが (16.8% vs 4.4%, p = 0.002),CKD,eGFR低下は有意差を認めなかった (28.9% vs 19.1%, p = 0.079, 17.2% vs 15.0%, p = 0.628).多変量ロジスティック回帰分析では,既存のリスク因子で調整しても,血漿アルドステロン濃度 (PAC)はCKD,蛋白尿,eGFR低下のオッズ比を増加させた.
【結論】PA患者における腎障害はPACと密接に相関していた.同じJPASのデータベースを用いた研究で,我々は,PA患者における脳卒中・虚血性心疾患などの心血管合併症はPAC自体との直線的な相関を認めないと報告しており,PA患者における腎障害は大血管合併症とは異なる機序が想定された.