抄訳
本研究では原発性アルドステロン症(PA)において非機能性と診断された副腎腫瘍がPA患者に与える影響を検討した。日本全国29施設共同で作成したPA患者データベース(JPAS)の内、副腎静脈サンプリングで両側性と診断された527例を、診断基準上非機能性の副腎腫瘍がある群とない群に分け、両群の患者背景とホルモン値の比較を行った。すると、腫瘍あり群はなし群と比べ、糖尿病及び蛋白尿の有病率が有意に高く、年齢、性別といった患者背景を調整した上でも、1mgデキサメサゾン抑制試験(DST)後コルチゾール値が有意に高かった。さらに腫瘍サイズは1mgDST後コルチゾール値と有意な正相関を認めた。これまで1mgDSTでコルチゾール値1.8 µg/dL以下に抑制される副腎腫瘍は非機能性と考えられていたが、本研究によって、コルチゾール自律産生能がないと診断された副腎腫瘍であっても、微量なコルチゾール産生能が存在し、糖尿病や蛋白尿を引き起こす可能性が示唆された。