抄訳
劇症1型糖尿病(FT1DM)では発症時、膵外分泌酵素の上昇に加え、膵臓の腫大を伴う症例も報告されており、急激なβ細胞破壊と外分泌の炎症とともにおこっている可能性を裏付ける。本研究ではFT1DM膵臓の免疫組織学的および病理学的変化を検討することを目標とし、3例のFT1DM膵と17例の非糖尿病患者膵を比較検討した。CD45、CD3、CD8、CD4、CD20、CD11c、CD68陽性細胞、VP1(エンテロウイルスカプシド蛋白)、CXCL10、そのレセプターであるCXCR3を染色し、膵島および周辺の外分泌腺組織(Exo)の各免疫細胞数を計測した。膵島およびExoの各免疫細胞数はFT1DM膵ではコントロール群と比較し有意に増加し、特にCD8、CD11c、CD68陽性細胞数が高値であった。VP1はFT1DM膵では膵島、外分泌腺、膵管上皮細胞、十二指腸粘膜で陽性であった。また、FT1DM膵では膵島および外分泌腺にCXCL10陽性細胞を認め、周囲にCXCR3陽性T細胞を認めた。以上のことからFT1DM膵では膵島、外分泌腺、膵管、十二指腸粘膜のウイルス感染に伴って樹状細胞やマクロファージが浸潤することが明らかとなった。またサイトカインやケモカインを介して活性化した自己反応性T細胞によって外分泌腺の炎症が惹起され、β細胞死に陥る可能性が示唆された。