抄訳
ラン藻ミクロキスティスは肝臓毒生産能を有し、世界中の湖沼で異常増殖してアオコを形成するため、重要な生物種と捉えられています。本種は極めて多くのウイルス耐性遺伝子を有し、多種多様なウイルスと環境中で相互作用すると示唆されてきましたが、本種感染ウイルス分離例は当研究室保有のMa-LMM01に限られていました。本研究では京都府広沢池にてウイルスメタゲノム解析をおこない、24時間に渡ってミクロキスティスとウイルスの包括的転写解析をおこないました。その結果、大きく3つのグループから成る15の新規本種感染ウイルスゲノムを明らかにしました。また環境中にはMa-LMM01のような非常に限られたミクロキスティス株にのみ感染可能な狭域宿主ウイルスと、様々なミクロキスティス株に感染可能な広域宿主ウイルスが共存することを見出しました。包括的転写解析より、ミクロキスティスは特に後者による感染に応じてウイルス耐性遺伝子を発現させることが示唆されました。