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2019/09/18

一酸化窒素による消化管制御の進化

論文タイトル
Evolution of nitric oxide regulation of gut function
論文タイトル(訳)
一酸化窒素による消化管制御の進化
DOI
10.1073/pnas.1816973116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS March 19, 2019 116 (12) 5607-5612
著者名(敬称略)
谷口 順子、谷口 俊介
所属
筑波大学 生命環境系下田臨海実験センター

抄訳

 バフンウニ(Hemicentrotus pulcherrimus)を用いて、その幼生期の胃腸において、幽門の開口は一酸化窒素によって制御されており、その近傍には神経型一酸化窒素合成酵素を発現している内胚葉由来の神経様細胞が存在していることを明らかにしました。
 ヒトを含む脊椎動物では、神経堤細胞由来の腸管神経が胃や腸といった消化管の機能を制御しています。しかし、神経堤細胞は脊椎動物でしか見られないため、消化管制御の仕組みが動物進化の過程でどのように獲得され、多様化してきたのかを議論することが不可能でした。そこで、脊椎動物と同じ後口動物に属しながら、神経堤細胞を持たない無脊椎動物である棘皮動物のウニ幼生の消化管に着目し、特に幽門の開閉がどのように制御されているのかを明らかにすることを試みました。その結果、ウニ幼生の幽門付近に神経様細胞が存在しており、そこで生産されている一酸化窒素が幽門の開口を制御していることが明らかになりました。さらに、この神経様細胞の由来を調べてみると、内胚葉由来であることが明らかになりました。このことは、ヒトを含む脊椎動物においても、消化管制御に関わる内胚葉由来の神経が新たに発見される可能性や、幽門開口の制御システムが進化の過程でどのように神経堤細胞由来のシステムへと移行していったのかを議論する上で重要なヒントを与える成果です。

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