抄訳
近年天然アミノ酸にはない機能を発揮する人工アミノ酸をタンパク質に導入する技術の開発が進んでいる。筆者等が開発したピロリシルtRNA合成酵素(PylRS)のY306A/Y384F変異体(AF変異PylRS)は、様々な官能基をもつ大きなサイズの人工アミノ酸を認識できることから世界中でタンパク質への導入に利用され、抗体医薬の作製などさまざまな用途に用いられて来た。一方でAF変異PylRSが多様な人工アミノ酸を取り込むメカニズムについては不明であった。筆者等は14種類の人工アミノ酸がAF変異PylRSにどのように結合しているかX線結晶構造解析で詳しく調べることにより、AF変異PylRSがそれぞれの人工アミノ酸に特異的に対応し、1結合型、2結合型、3結合型という異なる結合様式で人工アミノ酸を認識していることを明らかにした。AF変異PylRSの構造情報を元に設計された人工アミノ酸でタンパク質を高機能化することにより、医療や産業分野への展開が期待できる。