抄訳
長期免疫記憶はワクチンの予防効果に必須である。著者らは、黄色ブドウ球菌 (S. aureus)の産生するスーパー抗原毒素である毒素性ショック症候群毒素-1の弱毒変異タンパク質(mTSST-1)で免疫したマウスにおいて、獲得免疫成立早期のS. aureus感染に対し17型ヘルパーT (Th17)細胞依存性にワクチン効果が認められることを報告した。Th17細胞には可塑性があるため、本研究では、mTSST-1免疫による長期記憶期のワクチン効果を検討したところ、S. aureus感染に対するワクチン効果は認められなかった。この時期の脾臓由来CD4+T細胞とマクロファージをmTSST-1刺激すると、サイトカイン応答はIL-17AからIL-10に変換していた。そこで、抗IL-10抗体添加の影響を見たところ、IL-17A産生が回復した。また、S. aureus感染前のmTSST-1免疫マウスに抗IL-10抗体を投与すると、脾臓のIL-17mRNA発現とワクチン効果が回復した。これらの結果から、mTSST-1免疫マウスの長期記憶期ではIL-10産生が主体となりIL-17A依存性感染防御を抑制することが理由で、ワクチン効果が発揮されないことが示唆された。