抄訳
優性遺伝性GH1遺伝子異常症(本症)における、exon 3が欠失した変異型GH(Δ3 GH)による優性阻害効果の詳細は不明である。我々は、Cre-変異loxによる遺伝子置換システムを用いて、マウス内在性Gh遺伝子の両アリルを、ヒトGH1遺伝子に置換したモデルマウスを作製した。作出した本症モデルマウスは、健常コントロールモデルと比べて明らかな成長障害を呈し、ヒト本症の臨床像を再現した。各種検討の結果、Δ3 GHによる優性阻害効果はGH1 mRNAが低下することにより発揮されていた。さらに、LacZノックインマウスを用いた検討により、小胞体に局在するΔ3 GHにより、Ghrhr遺伝子のpromoter活性が低下することが明らかになった。最後に我々は近年同定されたCREB3ファミリーに着目し、Δ3 GHによる小胞体ストレスにより核内に移行するCREB3L2が低下することが、GhrhrおよびGh promoter活性低下に関与することを突き止めた。1994年の初報以来不明であった本症GH分泌不全の解明のためのモデルマウスの重要性について、先行研究結果と共に考察を加える。