抄訳
内眼手術後の腸球菌性眼内炎は,進行が早く、視力予後が不良な重篤な疾患である。またバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による術後眼内炎も増加している。バクテリオファージは細菌特異的に感染し溶菌させるウイルスである。我々は、マウス腸球菌眼内炎モデルに対しファージ硝子体投与の治療効果について検討した。
バンコマイシン感受性腸球菌あるいはVREを硝子体に投与し眼内炎を誘導すると、24時間後には眼内炎が生じ,眼底は出血や硝子体混濁で透見不能となり、網膜電図での網膜機能は消失し、病理学的検討では網膜剥離を認めた。感染6時間後にファージを硝子体に投与すると,臨床スコア,生細菌数すべて有意に低下し、病理学的に網膜構造は保たれ、網膜電図でも網膜機能は維持されていた。
ファージの硝子体投与は,薬剤感受性あるいは耐性に関わらずマウス眼内炎に対する治療効果があり,抗菌薬非依存性の新規治療法となる可能性が示唆された。