抄訳
ER膜上のリボソームにより合成される複数回膜貫通型タンパク質は、翻訳と同時にトランスロコンによりER膜に挿入され、適切に折りたたまれ機能的なタンパク質となるが、その挿入・折りたたみの過程はよく分かっていない。私達は、小胞体膜タンパク質複合体(EMC)がロドプシンを含む複数膜貫通ドメインを持つ膜タンパク質の生合成に必要であり、その欠損が網膜変性を引き起こすことを報告していた(Satoh et al., 2015 eLife)。本研究では、EMCの機能を詳細に解析し、EMCがロドプシンの生合成とはじめの3つのヘリックスの挿入には必要がないが、それにひき続いて合成されるヘリックスの挿入に必要であることを示した。この結果は、EMCが複数膜貫通タンパク質の膜への挿入過程において、トランスロコンからの離脱が困難な膜貫通ヘリックスを認識し離脱を促進することによって、後方のヘリックスにトランスロコンを開放し、適切に挿入が行われることを可能にしていることを示している。