抄訳
1960年代のピロロキノリンキノン(PQQ)の発見以来、多くのPQQ依存性酵素が原核生物で見出されてきた。一方で、真核生物におけるPQQ依存性酵素の存在は長らく疑問視されていたが、2014年に真核生物で初となる、担子菌Coprinopsis cinerea由来のPQQ依存性ピラノース脱水素酵素を我々が報告した。本酵素はPQQドメインに加え、シトクロムドメインとセルロース結合性ドメインを有したキノヘモプロテインである。本研究ではPQQドメインとシトクロムドメインの立体構造を決定することに成功し、構造学的な証拠をもって、このピラノース脱水素酵素の補酵素がPQQであることを証明した。アミノ酸配列の相同性が低いにもかかわらず、既知のPQQ依存性酵素と同じく6枚羽根のスーパーバレル構造であった。シトクロムドメインでは、ヘムプロピオン酸近傍の正電荷を有するアルギニン残基の存在が本酵素の特徴であった。