抄訳
嫌気性繊毛虫の多くは細胞内にメタン生成アーキアとバクテリアを細胞内共生させているが、培養による維持が難しいためにその生理や生態について解析が進んでいない。本研究では、排水処理施設より嫌気性繊毛虫GW7株の安定培養株を確立し、電子顕微鏡観察とドメイン特異的な蛍光 is situ ハイブリダイゼーション(FISH)により、GW7株が細胞質内にアーキアとバクテリアの細胞内共生体を保持していることを明らかにした。これらの細胞内共生体は、嫌気環境下で水素とATPを生産する細胞内小器官であるヒドロゲノソームにそれぞれ付随しており、16S rRNA遺伝子のクローン解析や共生体特異的なFISHにより、細胞内共生アーキアはMethanoregula属のメタン生成アーキアであり、これは以前にGW7株とは系統的に離れたMetopus属繊毛虫の細胞内共生体として報告されていたものに近縁であった。細胞内共生バクテリアは、様々な繊毛虫の細胞内共生体が含まれるα-ProteobacteriaのHolosporaceae科に属していた。本研究では、この細胞内共生体について、Candidatus Hydrogenosomobacter endosymbioticusとして新属、新種提案を行った。