抄訳
薬剤耐性菌対策の一環として、ヒト・動物・環境を包括的に捉えた取り組みが必要とされている。私たちは、フィリピンの環境調査により分離されたカルバペネマーゼ産生腸内細菌科(CPE)について、その分子遺伝学的特徴を明らかにした。
2016年~2018年の期間に、フィリピンの病院排水(7病院)、河川水より計83検体を採取し、分離されたCPEについて、薬剤感受性試験、遺伝子解析による耐性遺伝子およびプラスミド型別、MLSTを実施した。耐性遺伝子の伝達能評価として、大腸菌を受容株とした接合伝達試験を行った。
採取した検体より、Enterobacter属やKlebsiella属、大腸菌等51株のCPEが分離された。耐性遺伝子は、フィリピンのヒト臨床で多く分離されるNDM型が39株と最も多く、その他KPC型、OXA-48型なども検出された。MLST解析では、大腸菌11株のうち6株は、ヒトや動物などから広く検出されるclonal complex 10に属した。プラスミドはIncX3が多く検出され、CPE 51株中24株が大腸菌J53に伝達可能であった。
本研究により、フィリピンの環境におけるCPEの存在が明らかとなった。ヒトから検出報告のある耐性菌の耐性遺伝子、ゲノム型と同様のものが検出され、ヒト由来耐性菌の環境への流出や、環境中での広がり、環境からヒトへの伝播の可能性が推察された。