抄訳
ロタウイルスは11分節のRNAゲノムを有し、乳幼児に重篤な急性胃腸炎を引き起こすウイルスである。最近、我々はサルロタウイルスにおいて、11分節のウイルスゲノムを発現するプラスミドDNAから任意の組換えウイルスを人工合成できるリバースジェネティクス(RG)系の開発に成功した。しかし、サルロタウイルスとヒトロタウイルス間ではウイルス学的性状が異なる部分も多く、ヒトロタウイルスの増殖機構や病態発現機序をより理解するためには、ヒトロタウイルスのRG系の確立が望まれていた。
本研究において、我々は世界的に流行している遺伝子型の一つであるG4P[8]型に属するヒトロタウイルスOdelia株のRG系の開発に成功した。さらに、Odelia株のRG系を用いて、免疫抑制活性を有するロタウイルスNSP1タンパク質における変異ウイルスを作製し、解析を行った。その結果、ヒトロタウイルスNSP1のC末端側166アミノ酸残基の領域がウイルス複製において重要な役割を担っていることが明らかとなった。本技術の開発により、ヒトロタウイルスの性状解析や予防・治療法開発の進展が期待される。