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2020/03/16

GIP分泌の欠損が、加齢性肥満やインスリン抵抗性を軽減する

論文タイトル
Absence of GIP secretion alleviates age-related obesity and insulin resistance
論文タイトル(訳)
GIP分泌の欠損が、加齢性肥満やインスリン抵抗性を軽減する
DOI
10.1530/JOE-19-0477
ジャーナル名
Journal of Endocrinology
巻号
Vol.245 No.1 (13-20)
著者名(敬称略)
金丸 良徳, 原田 範雄, 稲垣 暢也 他
所属
京都大学大学院 医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学

抄訳

glucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)は、栄養素の摂取によって腸管内分泌K細胞から分泌されるインクレチンである。栄養素の中で脂質はGIP分泌を強く刺激し、GIP分泌の亢進は高脂肪食摂取下の肥満やインスリン抵抗性の形成に関与する。加齢においてもGIP分泌の亢進が認められるが、GIP分泌の亢進が体重増加やインスリン感受性への影響については不明である。本研究では、野生型マウスに比較してGIP分泌が欠損および半減しているGIPホモ欠損 (GIP-/-) 、 ヘテロ欠損 (GIP+/-) マウスを用いて、加齢に伴う体重増加やインスリン抵抗性形成へのGIPの影響について検討した。総エネルギーの12%に相当する脂肪を含有する通常食摂取下では、野生型 (WT)マウスに比較してGIP-/-マウスは38週齢以降に有意な体重の低下を認めた。一方で、WTマウスとGIP+/-マウスの体重に有意な差を認めなかった。GIP-/-マウスの内臓脂肪と皮下脂肪量は、WTおよびGIP+/-マウスに比較して有意に減少した。経口ブドウ糖負荷試験時の血糖値は、3群間で有意な差を認めなかった。しかしインスリン値は、WTおよびGIP+/-マウスに比較してGIP-/-マウスで有意な低下を認めた。インスリン負荷試験では、GIP-/-マウスのインスリン感受性が最も高く、WTマウスとGIP+/-マウス間で有意な差を認めなかった。これらの結果から、GIPが加齢に伴う肥満やインスリン抵抗性に関与すること、そしてGIP分泌の阻害が加齢性の脂肪量増加やインスリン抵抗性の軽減に作用することが明らかとなった。

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