抄訳
子宮内に存在するエクソソームを始めとした細胞外小胞(EVs)は胚着床期の胞胚と子宮内膜の相互作用に関与している。しかしながら、これらEVsは、ウシの妊娠認識物質であるIFNTを含むため、それにより効果がマスクされ、その詳細な作用が不明である。本研究では、胚由来EVsの子宮内膜へのIFNT非依存的な効果を調べるため、非妊娠または妊娠子宮内EVs、さらにIFNTを初代培養ウシ子宮内膜細胞に処置し、それぞれの遺伝子発現をRNA-seqにより網羅的に調べた。3群の比較により、IFNT非依存的に変化する82の遺伝子を同定し、その多くがTNF関連因子であった。さらに、妊娠子宮内EVsにはTNFファミリーであるCD40Lが多く存在しており、これが子宮内膜のCD40と結合することでNF-kBシグナリングを活性化させることを示した。これらの結果から、ウシ妊娠着床期における胚由来EVsは、子宮内膜に作用し、IFNT非依存的に炎症反応を起こすことで、子宮内膜の受容能の調節と、胚着床を誘導することが示唆された。