抄訳
原発性副甲状腺機能亢進症に対する外科的治療の際に、責任病変の摘出の確認は主に凍結切片の術中迅速病理検査により行われている。しかし、病理医不足は発展途上国で深刻であり、責任病変摘出の確認が容易に行えない。我々のグループは最近、正常副甲状腺の可能性がある組織の懸濁液中のAST/LDH(ともに一般生化学的検査項目であり、日常的に測定されている。)比が0.27より高い場合、その組織が副甲状腺であることを明らかにした(Kikumori et al. Surgery, 2020, p385-9)。
今回の研究では、副甲状腺機能亢進症を来す副甲状腺過形成や腺腫組織が懸濁液中のAST/LDH比により、副甲状腺組織と判別可能かを検討した。22名の原発性副甲状腺機能亢進症の症例で得られた副甲状腺過形成または腺腫を対象とした。他の組織のデータは以前の我々の報告を用いた(上記引用文献)。
この検討により、機能亢進状態の副甲状腺は懸濁液中のAST/LDH比が0.36より高い場合、100%の精度で他の組織と判別できることが示された。
この研究により、組織懸濁液中のAST/LDH比が迅速病理検査の代替として原発性副甲状腺機能亢進症に対する外科治療の際の新たな責任病変確認手段となりうることが示された。