抄訳
フェニルアラニンおよびチロシン生産菌の開発では、合成経路の遺伝子発現にプラスミドが用いられるのが一般的である。一方、プラスミド非依存型の生産菌は培養コストと安全性の点で優れているが、目的物の収量や収率が低い。そこで本研究では、大腸菌の染色体DNAを改変し、プラスミド非依存型にもかかわらず優れた収量や収率を示す生産菌の作製を試みた。
中央代謝経路とシキミ酸経路の10種類の遺伝子(aroA、aroB、aroC、aroD、aroE、aroGfbr、aroL、pheAfbr、ppsA、およびtktA)をT7lacプロモーターに連結して大腸菌の染色体へ導入したところ、当該菌株は非常に高い収量と収率でフェニルアラニンを生産した。導入したPheAfbr遺伝子をtyrAfbr遺伝子に変更することで、優れたチロシン生産菌を作製することにも成功した。さらに導入した10種類の遺伝子のうち、aroD、aroE、およびaroLを除いた7種類が優れた菌株を作製するために必要な最小遺伝子セットであることを明らかにした。育種した生産菌は、チロソールやフェニル乳酸などを高生産するための有用な宿主として利用できることを実証した。