抄訳
細胞の脂質組成は、細胞の種類や細胞小器官によって異なる。これらの生体膜を構成するのは主にリン脂質であり、リン脂質は親水性の頭部と疎水性の尾部(脂肪酸)から構成される。生体内の様々な生命現象において、生体膜に脂質膜変形タンパク質が結合することで膜の形態は制御される。これまでの脂質膜変形タンパク質の脂質結合では、負電荷をもつホスファチジルセリンやホスホイノシチド等の脂質の頭部が重要であると認識されてきた。
最近の研究により、タンパク質の疎水性アミノ酸と脂質間の隙間に露出した脂肪酸が相互作用が見出されてきた。リン脂質間の隙間の大きさは、脂肪酸の種類によって異なり、脂質膜変形タンパク質の膜変形能は脂肪酸組成によって制御されることが報告されている。脂質組成における頭部の種類と脂肪酸の多様性は、リン脂質間の隙間の大きさと膜の表面電荷に多様性を与える。
このレビューでは、脂質の頭部と尾部の脂肪酸の多様性がどのように脂質膜変形タンパク質の膜変形能を調節しているか紹介している。