抄訳
生体膜は脂質二重層からなり、その内葉と外葉の間で脂質組成は非対称に保たれている。P4-ATPaseは、膜脂質を外葉から内葉へと転移(フリップ)することで脂質非対称性を調整するフリッパーゼである。これまでに私たちは、ほとんどのP4-ATPaseが小胞体で生合成された後、CDC50と相互作用することで小胞体から輸送されることを示した。そのうち、ATP10A、ATP10D、ATP11A、ATP11Cは細胞膜に、ATP10BとATP11Bは特定のエンドソームに局在することを報告した。しかしながら、これらの細胞内局在がどのようにして決定されるかは不明であった。膜10回貫通型タンパク質であるP4-ATPaseのN末端とC末端はサイトゾル側に存在する。本研究では、ATP10ファミリーではN末領域が、ATP11ファミリーではC末領域が細胞膜や特定のエンドソームへの局在に必須であり、これらの領域に局在化シグナルが存在することを示唆した。特に、ATP10BのN末領域に存在するジロイシン配列が、後期エンドソームへの輸送のシグナルになることを示した。このような局在化シグナルを介したP4-ATPaseの細胞内局在における分子メカニズムの解明が今後の課題である。