抄訳
リグニンの有効利用法として、リグニンを化学的に低分子化し、得られる芳香族化合物を微生物の代謝能により有価物に変換する技術が注目されている。Sphingobium sp. SYK-6株は、リグニンの主要な分解物であるシリンガ酸およびバニリン酸を代謝する過程でポリマー原料となる中間代謝物を生成する。SYK-6株を基盤としたリグニン変換システムを構築するには、これら化合物の取り込みおよび分解酵素遺伝子を同定し、その転写制御系を明らかにする必要がある。本研究では、SYK-6株のシリンガ酸脱メチル酵素遺伝子desAの転写制御が、IclR型転写制御因子DesXによって負に制御されること、DesXによる負の制御は、シリンガ酸またはバニリン酸存在下で解除されることを明らかにした。以上の結果と、MarR型転写制御因子DesRによるligMとdesBの転写制御系に関する知見から、SYK-6株のシリンガ酸・バニリン酸代謝制御系の全体像が明らかとなった。