抄訳
がん生殖医療において、がん治療後の適切な不妊治療を提供するため、2015年1月から2019年9月までに当院で妊孕性温存治療を受けた43歳以下の女性患者67例を対象に後方視的にデータを分析した。
対象患者は、乳がん患者28例、血液がん患者19例、その他のがん患者20例を含む67例であった。
乳がん患者は、がん治療開始前に妊孕性温存に関して当科を受診する割合が大きく、血液がん患者はがん治療開始前に妊孕性温存治療を受ける割合が小さい傾向を認めた。
20歳以上の患者のうち既婚者は計15例(25%)で同年代の一般女性の既婚率と比較して低く、そのうち5年間のフォロー中に新たに結婚した患者は4例であった。がん治療終了後の妊娠転帰として、ART (Assisted Reproductive Technology) を施行した患者は計3例であった。妊娠した患者は計9例でそのうちARTによる妊娠は2例であり、自然妊娠による妊娠例を7例認めた。
若年女性がん生存者の妊娠転帰を改善させるために生殖医療のみならず、がん治療終了後に妊娠を望む環境を整備すべく社会的支援を拡充する必要と、患者個々に応じた適切な妊娠方法を検討する必要があり、自然妊娠も実行可能な選択肢である。