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2021/03/08

IFT-A複合体とIFT-B複合体の協同による繊毛内逆行性タンパク質輸送とGタンパク質共役受容体の繊毛内移行の調節

論文タイトル
Cooperation of the IFT-A complex with the IFT-B complex is required for ciliary retrograde protein trafficking and GPCR import
論文タイトル(訳)
IFT-A複合体とIFT-B複合体の協同による繊毛内逆行性タンパク質輸送とGタンパク質共役受容体の繊毛内移行の調節
DOI
10.1091/mbc.E20-08-0556
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume 32, Issue 1(45-56)
著者名(敬称略)
古林 拓也, 加藤 洋平, 中山 和久 他
所属
京都大学大学院薬学研究科生体情報制御学分野

抄訳

 繊毛内タンパク質輸送装置(IFT装置)は、繊毛タンパク質の順行輸送と逆行輸送に加えて、繊毛ゲートを越えるタンパク質の繊毛内への移行および繊毛外への排出も仲介している。IFT装置は、IFT-A複合体とIFT-B複合体という2つのマルチサブユニット複合体から成るが、この2つの複合体がどのように協同して繊毛内タンパク質輸送を仲介しているのかについてはほとんどわかっていない。本研究では、IFT-A複合体のIFT144–IFT122とIFT-B複合体のIFT88–IFT52が、複合体同士の相互作用を媒介していることを発見した。IFT88ノックアウト(KO)細胞にIFT-A複合体との相互作用が減弱したIFT88(Δα)変異体を発現させると、IFT88-KO細胞で見られた繊毛形成不全が部分的に回復した。しかし、IFT88(Δα)発現細胞では、IFT-A複合体の繊毛内への侵入障害、IFT-Bタンパク質の繊毛先端への異常蓄積、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の繊毛内移行障害が見られた。さらに、繊毛先端部に過剰に蓄積したIFTタンパク質は細胞外小胞として放出されていた。これらの表現型はIFT144-KO細胞の表現型に類似していた。以上の観察結果から、IFT-A複合体はIFT-B複合体と協同することによって、繊毛先端からの逆行輸送だけでなく、GPCRの繊毛内移行も仲介していることが明らかになった。

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