抄訳
必須微量元素の1つである鉄はヘモグロビン等の生命活動に必須な代謝酵素の構成因子として重要であるが、生体内の鉄濃度を調節する内因性因子の情報は限られている。本研究では、肥満や糖尿病等の代謝異常性疾患で増加する12α水酸化胆汁酸(12OH)が鉄代謝に及ぼす影響についてラットを用いて調べた。肝臓で合成される一次胆汁酸、かつ12OHとして知られるコール酸を飼料に添加すると、摂取鉄量や鉄の吸収率とは無関係に肝臓鉄濃度が低下した。肝臓鉄代謝に関わる因子の解析では、12OH濃度の上昇に伴い鉄運搬タンパクであるリポカリン2(LCN2)が血中で増加した。すなわち、12OHはLCN2を介して肝臓鉄を細胞外に輸送することで肝臓における鉄濃度を低下させる可能性が示された。腸内細菌による二次胆汁酸生成を抗生物質で抑制した場合でも、12OHは血中リポカリン2濃度の上昇および肝臓鉄濃度の低下を誘導した。これらのことは、肝臓で合成される12OHが新規の肝臓鉄濃度調節因子である可能性を初めて示した。