抄訳
シゾロドプシン(SzR)は、真核生物の起源に最も近いアスガルドアーキアから発見されたロドプシンであり、水素イオンを細胞内へ運ぶ機能を持つ。アスガルドアーキアが真核生物へと変化する過程で、太陽光や酸素のある環境に順応するために、SzRによる水素イオンの取込みが関わっている可能性がある。しかし、SzRが水素イオンを、どの様にして効率的に細胞内に運ぶのか、そのメカニズムは不明だった。我々はX線結晶構造解析によりSzRの立体構造を決定した。SzR構造を他のロドプシンと比較することで、従来不明だったロドプシンの分子進化におけるSzRの位置づけを明らかにした。また、SzRは細胞内側の膜貫通領域が短く、水素イオンをタンパク質の細胞内側に放出しやすい構造をしており、細胞の外から取り込んだ水素イオンを細胞内側の溶媒へ直接放出するという、既知のロドプシンとは異なる水素イオンの輸送機構が明らかになった。