抄訳
腎臓の役割の一つに酸(H+)排泄があり、生体の酸塩基平衡の維持に重要である。H+はアンモニア(NH3)とともにアンモニウムイオン(NH4+)として尿中へ排泄される。その調節はアルドステロンとカリウム(K+)によるとされるが、詳細な機序は分かっていない。NH3は、集合尿細管間在細胞に発現するトランスポーターRhesus C glycoprotein (Rhcg)により排泄される。今回、アルドステロンによるRhcgの発現調節機序について検討した。C57BL/6Jマウスにアルドステロンを持続皮下投与すると、尿細管細胞膜上のRhcgの発現が増加した。アルドステロンとともに塩化カリウム(KCl)の飲水投与によりK+を負荷すると、Rhcg発現の増加が抑制された。次に、副腎摘出マウスに塩化アンモニウム(NH4Cl)の飲水投与によるH+負荷を施した上で、アルドステロンまたはvehicleを持続皮下投与した。副腎摘出はH+負荷により誘導されるRhcgの発現を阻害し、アルドステロンはRhcgの発現を回復させた。さらに、間在細胞由来細胞株(IN-IC細胞)を用いてRhcgの発現調節の機序について検討した。アルドステロンはRhcgの細胞膜上の発現を増加させ、ミネラロコルチコイド受容体阻害薬とPKC阻害薬はそれぞれアルドステロンの作用を阻害した。また、細胞外K+濃度の上昇はアルドステロンの作用を阻害した。
今回の検討により、腎臓におけるRhcgを介した酸排泄調節機序の一端が明らかとなった。