抄訳
ハダカデバネズミはアフリカのサバンナの地下に生息する小型齧歯類である。水にアクセスできない環境に暮らすことから、飲水はせず、水分摂取は餌に頼っている。我々はハダカデバネズミの浸透圧調節機構を明らかにするため、体液恒常性に関わる遺伝子の発現制御に重要な遺伝子、ミネラルコルチコイド受容体(nuclear receptor subfamily 3 group C member 2、MR)のクローニング及び機能解析を行なった。ほとんどの脊椎動物は単一のMRホモログを持つが、興味深いことにハダカデバネズミでは遺伝子重複が起き、2種類のMR遺伝子が生じていた。このうちMR1は他生物種のMRと高い相同性を持ち、発現パターンも類似していたのに対し、もう一方のMR2はDNAやリガンドとの結合に必要なドメインを欠損し、ホルモン産生に関わる組織などに高い発現が見られた。MR2は単独では転写活性化能を持たないものの、MR1と共発現することでその転写活性を亢進することが明らかとなった。MRの遺伝子重複はこれまでフタコブラクダでしか報告がなく、水の乏しい環境におけるMRシグナル伝達の調節に第二のMRが関わっている可能性が示唆される。