抄訳
過剰歯の発生頻度は約1%であり、上顎前歯部が半数を占め、1歯ないし2歯の発生がほとんどである。4歯以上の過剰歯は鎖骨頭蓋異骨症やGardner症候群などに発生することが報告されているが、症候群を伴わない3歯以上の過剰歯は稀であり、そのうち片側片顎臼歯部に発生した症例は数少ない。
患者は26歳男性で、遺伝性疾患を示唆する所見はなく、過剰歯や大腸腫瘍などの家族歴は認めなかった。左側上顎第二大臼歯口蓋側に1歯、頬側に3歯の過剰歯を認めた。過剰歯はいずれも矮小歯で、歯冠の形態は不定型であった。歯根は単根で湾曲していた。過剰歯の約75%は埋伏しているが、本症例では全て萌出していた。過剰歯の発生には様々な説があるが、本症例では第二大臼歯、第三大臼歯との癒合はなく、発生時期も独立していることから歯胚・歯堤の過剰形成によるものと考えられた。