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日本人論文紹介:詳細

2021/06/21

体細胞核移植に伴うエピジェネティクス異常

論文タイトル
25th ANNIVERSARY OF CLONING BY SOMATIC-CELL NUCLEAR TRANSFER: Epigenetic abnormalities associated with somatic cell nuclear transfer
論文タイトル(訳)
体細胞核移植に伴うエピジェネティクス異常
DOI
10.1530/REP-21-0013
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 162 Issue 1 (F45–F58)
著者名(敬称略)
小倉 淳郎 他
所属
理化学研究所バイオリソース研究センター遺伝工学基盤技術室

抄訳

体細胞核移植(Somatic Cell Nuclear Transfer, SCNT)は、1個の体細胞核からクローン胚やクローン個体を作り出す技術である。成体の体細胞核移植によって生まれた最初の哺乳動物、クローンヒツジDollyの報告(Nature 1997)からすでに25年が経過しようとしている。この間、SCNT関連の研究は飛躍的に進み、クローン動物の生産効率の向上に貢献するとともに、SCNTによるエピゲノム異常が次々と明らかになっている。これらの研究を通じて、ドナー体細胞のエピゲノム情報には卵子で再プログラムできるものとできないものがあることが明らかになってきた。現在では、ドナー体細胞ゲノムに含まれるゲノム刷込み情報(片親依存性遺伝子発現制御)は、典型ゲノム刷込み(DNAメチル化依存性)および非典型ゲノム刷込み(ヒストン修飾H3K27me3依存性)とも、SCNTでは再プログラム化されないことがわかっている。したがって、SCNT由来のクローン胚には、ドナー細胞の刷込み記憶パターンがそのまま引き継がれている。前者の典型ゲノム刷込みは、ドナー細胞でも基本的に正常なパターンが保たれており、クローン胚でも問題になることは少ない。一方、後者の非典型ゲノム刷り込みは、ドナー細胞で失われているために、クローン胚において正常な片アレル(父方)発現が破綻し、両アレル発現となり、主な発現器官である胎盤での過剰発現と表現型異常をきたす。また、刷込み記憶以外の体細胞エピゲノム記憶のうち、ヒストンアセチル化やH3K9me3などは不十分な再プログラム化が知られており、これがクローン胚の発生不全につながっている。SCNTから得られるエピゲノム情報は、体細胞クローン技術の改善への基盤となるとともに、エピゲノム異常の発生への影響を理解する上でも重要な知見をもたらす。

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