抄訳
症例は71歳の女性。肝内胆管癌に対する化学療法中に, 発熱性好中球減少症の予防目的にペグフィルグラスチム3.6mgを投与された。しかし,投与7日後より全身倦怠感, 胸背部痛, 発熱を認めた。 血液検査では,白血球やCRPの高値を呈した。造影CTでは, 大動脈炎を示唆する大動脈弓部の壁肥厚を認めた。 膠原病関連の自己抗体は陰性であった。鑑別疾患として巨細胞性動脈炎と高安動脈炎が挙げられたが, 診断基準に合致しなかった。 臨床経過よりペグフィルグラスチムによる大血管炎と診断し, ステロイドによる治療を開始した。ステロイド投与によって速やかな症状消失,血液検査での炎症反応の低下,造影CTでの壁肥厚の改善を認めた。また, 治療開始前の血液検査でIL-6は高値を呈していたが, 治療後に正常範囲内へ低下した。ペグフィルグラスチムによる大動脈炎は稀だが, 大動脈解離などの重篤な副作用が報告されているため, その認識は重要である。 診断のための画像検査とステロイドによる適切な治療が必要である。