抄訳
多くの細菌は鉄を利用する際にシデロフォアを産生する。シデロフォア産生は病原性に関与していることも報告があり、シデロフォア構造を解明することは医薬品開発への応用に期待ができる。Stenotrophomonas maltophilia は、肺炎を引き起こすグラム陰性菌であり、様々な環境に棲息しシデロフォアを産生する。S. maltophiliaの産生するシデロフォア構造を解明することは病原性の制御への応用に期待ができるが、そのシデロフォア構造は未知である。そこで、本研究ではS. maltophiliaの産生するシデロフォア構造の解明を目的とした。逆相HPLCを用いてS. maltophilia K279a 株の培養物からシデロフォアを精製した。シデロフォア構造は、LC-MSや1H, 13C NMRを用いて解析した。S. maltophilia K279a 株は、エンテロバクチンのモノマー分子である2,3-dihydroxybenzoyl-L-serine(DHBS)を産生することが明らかとなった。同時に、S. maltophilia K279aはDHBSと鉄の複合体を取り込むことを示唆した。また、エンテロバクチン生合成遺伝子の一部が欠損していることが影響しS. maltophilia はDHBSを産生することが考えられた。これらの結果はS. maltophilia による感染の制御に期待できる。