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2021/11/15

ほ乳動物の卵子と受精卵に蓄えられる脂肪滴量の恒常的な調節

論文タイトル
Homeostatic regulation of lipid droplet content in mammalian oocytes and embryos
論文タイトル(訳)
ほ乳動物の卵子と受精卵に蓄えられる脂肪滴量の恒常的な調節
DOI
10.1530/REP-21-0238
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 162 (2021): Issue 6 (Dec 2021) R99–R109
著者名(敬称略)
伊林 恵美 塚本 智史 他
所属
量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 生物研究推進室

抄訳

脂肪滴は、トリアシルグリセロールなどの中性脂肪がリン脂質の一重膜で覆われたオルガネラである。近年の研究から、脂肪滴は中性脂肪を貯蔵するだけでなく、様々な生理機能に関与していることが明らかになっている。脂肪滴はほとんどの真核細胞に存在するが、その大きさや量は異なる。ほ乳動物の卵子に脂肪滴が含まれることは古くから知られている。ブタやウシの卵子には多量の脂肪滴が含まれるため細胞質が黒ずんでいるが、マウスやヒトの卵子は少量のため半透明である。脂肪滴量が多い動物ほど、脂肪滴は卵子成熟や初期胚発生に必要だと考えられてきたが、脂肪滴を除去しても胚発生は正常に起こることから、脂肪滴の存在意義はよく分かっていない。しかし、最近の研究から、脂肪滴が着床に重要な役割を果たしていることや(脂肪滴が少量であっても)適量の脂肪滴が初期胚発生に必須であることが明らかになっている。このことから、ほ乳動物の初期胚発生過程では脂肪滴量は緻密に制御されていると考えられる。本総説では、ほ乳動物の卵子や受精卵における脂肪滴の生理学的役割について、近年の脂肪滴研究から明らかになった知見に基づいて解説する。

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