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2022/01/24

小児期に非アルコール性脂肪性肝炎を発症したTUBB3 E410K症候群の1例

論文タイトル
TUBB3 E410K Syndrome With Childhood-Onset Nonalcoholic Steatohepatitis
論文タイトル(訳)
小児期に非アルコール性脂肪性肝炎を発症したTUBB3 E410K症候群の1例
DOI
10.1210/clinem/dgab628
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismy
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol.107 Issue1 (e38–e43)
著者名(敬称略)
森 潤 他
所属
京都府立医科大学 小児科学/小児科学教室

抄訳

ß-チューブリン (TUBB3)は微小管の主要成分を構成し、細胞分裂や神経発生に関わる。従ってTUBB3の病原性多様体を持つTUBB E410K症候群の患者は様々な神経学的異常を有するが、非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH)の合併の報告はない。今回我々は、小児期にNASHを合併したTUBB3 E410K症候群の11歳女児例を経験した。生下時より両側眼瞼下垂、麻痺性斜視、顔面神経麻痺を認め、Moebius症候群としてフォローをされていた。7歳時にエクソーム解析でTUBB3 E410K症候群と診断した。10歳時から肝機能障害を認め、約2年間持続するため精査目的で肝生検を施行し、NASHと診断した。肝臓におけるTUBB3の発現を検討したところ、健常者とNASH患者の肝臓ではTUBB3とチロシンヒドロキシラーゼ (TH)は共発現していたが、本児の肝臓ではTUBB3の発現はなくTHのみ発現していた。近年全身の臓器が自律神経を介して様々な情報をやり取りし協調する臓器連関という概念が提唱されている。マウスにおいて自律神経の異常がNASHの病態に関与していることが報告されている。本症例はヒトにおいて自律神経の発生異常がNASHの発症に関与したことを初めて示唆する貴重な症例である。

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