抄訳
腸管生物時計の破綻は、栄養素の吸収効率を低下させ、代謝恒常性に悪影響を及ぼしうる。グルコースは腸管から吸収される重要な栄養素であるが、腸管生物時計とグルコース吸収との関連は不明な点が多い。本研究では、主要な時計遺伝子Bmal1を腸管特異的に欠損するマウス(Bmal1 int-/- マウス)を用い、糖代謝表現型の解析を行った。Bmal1 int-/- マウスでは、小腸におけるグルコーストランスポーター遺伝子Sglt1の発現リズムが消失し、活動期のグルコース吸収が低下していた。BMAL1と二量体を形成するCLOCKが、Sglt1のエンハンサー領域に時間依存性に結合しSglt1のリズム性発現を誘導したが、Bmal1 int-/- マウスでは時間依存性の結合が消失していた。また、Bmal1 int-/- マウスでは肝グリコーゲン量が時間依存性に減少し、その結果、絶食時において脂肪分解関連遺伝子Pnpla2の発現が亢進していた。以上より、腸管生物時計の破綻はグルコース吸収を低下させ、全身のエネルギー代謝に影響を及ぼすことが示唆された。