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2022/08/24

チアノーゼ性先天性心疾患に伴う褐色細胞腫及びパラガングリオーマの遺伝学的解析

論文タイトル
Genetic Analysis of Pheochromocytoma and Paraganglioma Complicating Cyanotic Congenital Heart Disease
論文タイトル(訳)
チアノーゼ性先天性心疾患に伴う褐色細胞腫及びパラガングリオーマの遺伝学的解析
DOI
10.1210/clinem/dgac362
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 107, Issue 9, September 2022, Pages 2545–2555
著者名(敬称略)
小笠原 辰樹, 小川 誠司 他
所属
京都大学 医学研究科 腫瘍生物学講座

抄訳

慢性的な低酸素環境は褐色細胞腫・パラガングリオーマ (PPGL) のリスク要因であり、例えばチアノーゼ性先天性心疾患患者では比較的高頻度にPPGLを併発する (CCHD-PPGL)。今回我々はCCHD-PPGLの腫瘍化メカニズムの解明を目的として、多発腫瘍を有する3人を含むCCHD-PPGL患者7人から腫瘍組織 (15個) 及び正常組織 (7個) を収集し、全エクソン解析を行った。変異解析ではPPGL 15検体中14検体で機能獲得型のEPAS1体細胞変異を認めた。多発腫瘍を有する3例の検討では、EPAS1変異を認めなかった1個の腫瘍を除き、全腫瘍において異なるEPAS1変異が観察されたことから、低酸素環境下ではEPAS1変異を有する腫瘍の発症が著しく促進されることが示唆された。興味深いことに、それら3例のうち1例は12歳時に低酸素血症は改善していたにもかかわらず、30歳及び35歳時にEPAS1変異を有する多数のPPGLの発症を認めた。このことから、CCHDによる低酸素環境は幼少期におけるEPAS1変異を有するクローンの陽性選択には重要であるが、その後のPPGL発生の過程において低酸素環境そのものは必要ではない可能性が示唆された。

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