抄訳
ラット卵巣顆粒膜細胞の初代培養系を用い、エタノールが及ぼす影響に関して以下の検討を行った。
卵巣顆粒膜細胞は生殖年齢の個体において、エストロゲン分泌の主座であるが、その合成酵素(アロマターゼ)は、FSH刺激により誘導される。エタノールの添加はFSHによるアロマターゼ発現をmRNAおよび蛋白のレベルで有意に増強した。また、基質となるアンドロゲン存在下では、顆粒膜細胞によるエストロゲン分泌増加も観察された。FSH刺激は顆粒膜細胞の分化も誘導するが、これはLH受容体の発現に良く反映される。エタノールは、FSHによるLH受容体発現をmRNAおよび蛋白のレベルで増強した。
FSH刺激の主たる2ndメッセンジャーであるcAMPを定量したところ、エタノール添加によりFSH誘導性cAMPの増加が認められた。エタノールによるadenylyl cyclaseの活性化はこれまでに報告があるが、FSH刺激下の顆粒膜細胞でもこれが確認された。
飲酒女性で血中エストロゲン値が上昇する事はこれまでにも報告されており、乳がんや子宮筋腫等のエストロゲン関連疾患では、飲酒は増悪因子として知られている。今回の結果はこれらの機序に関与している可能性があると考えている。