抄訳
ゴーシェ病(GD)はGBA遺伝子の変異により、β-グルコシルセラミド(β-GlcCer)が蓄積することで発症する小児難病である。しかしながら、β-GlcCerが致死性の神経症状を引き起こすメカニズムは明らかになっておらず、有効な治療法も存在しない。今回我々は、GDで蓄積したβ-GlcCerがmacrophage-inducible C-type lectin(Mincle)を介してミクログリアを活性化し、神経細胞の貪食を誘導することで神経症状を悪化させることを発見した。活性化ミクログリアから放出されるTumor necrosis factor(TNF)は神経細胞を貪食されやすくすることで、この過程を増悪させていた。この特徴的な病態はGD患者でも観察された。既に別の用途で用いられているFood and Drug Administration(FDA)承認薬によりこの経路をブロックすることで、神経細胞は保護され神経症状が改善した。ミクログリア活性化を既存の薬剤で阻害することで(ドラッグリポジショニング)、致死性の神経GD患者に対して速やかに臨床応用可能な治療選択肢を提供できる可能性が示唆された。