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2023/04/03

糸状性細菌Leptothrixの鞘形成に必須な推定糖転移酵素ファミリー8タンパク質をコードする遺伝子lthBの同定

論文タイトル
Identification of lthB, a Gene Encoding a Putative Glycosyltransferase Family 8 Protein Required for Leptothrix Sheath Formation
論文タイトル(訳)
糸状性細菌Leptothrixの鞘形成に必須な推定糖転移酵素ファミリー8タンパク質をコードする遺伝子lthBの同定
DOI
10.1128/aem.01919-22
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology March 23, 2023 e01919-22
著者名(敬称略)
久能 樹、 山本達也 他
所属
筑波大学 生命環境系

抄訳

糸状性細菌は細胞が連なり糸状に伸長する細胞鎖伸長と、その周りを覆う微小繊維からなる鞘形成を特徴とする細菌である。近年、細胞外シグナルを介した糸状性細菌の細胞鎖伸長制御が注目されているが、細胞鎖伸長と鞘形成における基本的な理解は未だ得られていない。本論文では、糸状性細菌Leptothrix cholodnii SP-6の自然突然変異株を取得し、次世代ゲノムシークエンスによる変異解析を行い、微小繊維分泌に関わる新たな推定糖転移酵素として、Lcho_0972遺伝子にコードされるLthBを同定した。lthB破壊株と、以前に我々が同定した別の糖転移酵素、LthAの破壊株との表現型を比較した。いずれの破壊株も微小繊維分泌に異常がみられ鞘形成はできなかったが、細胞鎖伸長に差異がみられた。lthA破壊株は細胞増殖するものの、細胞鎖は形成されず、個々の細胞がバラバラの状態であった。一方、lthB破壊株は鞘形成を行わないにも関わらず、野生型株と同様に糸状の細胞鎖伸長が見られた。これらのことから、細胞鎖伸長には鞘が必要ないことが示唆された。また、鞘の消失による細胞鎖の切断を誘導する細胞外カルシウム枯渇は、LthAの発現のみを阻害したことから、これらの糖転移酵素は異なるシグナル制御下で微小繊維分泌に協調的に関与していると考えられる。このような分子制御に関する知見は、糸状性菌の生態をより深く理解するために不可欠であり、ひいては工業施設における糸状性菌の制御戦略の改善に役立つと考えている。

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